午後3時ぐらい。
 翔子は、部屋に戻っていた。

 ――生徒会ね……
 興味が湧いてきたらしい。特に興味深々なのは、生徒会長の海道美知。
 正直圧倒されてしまった。

「ま、美しさは私が上だけど」
 最低ラインのことは譲れないようだ。

「それにしても……あの気品はどっから出てくるのかしら?」
 あれは真似できない。翔子の性格ならなおさらだ。
 ああいうのは日頃の行いから躾けないといけないのだ。翔子のわがまま性格ではまず無理だ。

「なぜ、この私にあの気品が出ないのかしら? 許せないわね」
 早速、これは何かの間違いだと言い聞かせる。常に世界はこの私中心にあるという翔子だ。
 まあ、仕方ないが。

 だが、そう思うということは、負けでもある。

 ――生徒会の部員か……
 海道美知が推薦してくれるとのこと。今回は、事前に亜津子には一言入れるらしい。


 ――ま〜たうるさいでしょうね。さ〜て
 文句言われたらどう言い返すかを思案中。すると、部屋着のまま、フィットネスを始めた。

 美しさを保つためには、運動や健康は大切だ。翔子は暇になると運動をすることがある。
 抜群のプロポーションを保つためには、必要な行為だ。
 鏡で自分を見ながら……

 翔子はうっとりとしていた。



「お、オナニーはします! しますから!」
 ビクンビクンと寸止めがくる。

「本当にするのね?」
 しつこく聞く亜津子。オナニーでイクのは禁止だが、オナニーは積極的にやれという躾をしているのだ。
「は、はい!」
 一度イク喜びを覚えた穴は、ひたすら欲している。一回ぐらいでは満たされない。

「じゃあ、いいなさい。イクのは禁止しますって」
「い、イクのは禁止します!」
 もうイキたい ゆみ。制服が汗で濡れている。

「おイキなさい!」
 スイッチが入った。こいつを入れると、絶頂まで導くらしい。

「あひゃっ! あひゃああああああああああああっ!――」
 二回目がきた。悦に浸る ゆみ。もともとマゾ調教されていた ゆみの身体。これでさらに深みに入り込む。

 ――うふふ……さ〜て

 もう飽きたようだ。後はこれの繰り返しなのだから。
「あなたたち、今のやり方覚えたわね?」
「は〜い」
 一回生たちが数人いる。どうやらレズ後輩にこれをやらせるらしい。

「私がいいというまで、今の行為をずっと続けるのよ」
「はい」

「ゆみ、素直に言わないと、また寸止めだらけにするからね」
「え、ええ……」
 もうイキたいだけだ。後輩にされようがただただイキたいだけ。

「じゃあ、お願いね。子猫たち。私は出かけてくるわ」
 魅力的なお尻を振りながら、亜津子が部屋から出て行く。

「じゃあ、お姉さま行きますよ」
 そういってスイッチを切る。寸止めが始まった……


 隣の監視部屋にいる亜津子と舞堂 葵。
「どうせ、隠れてすると思うけど」
「ふふふ、すぐには暗示はかからないのはわかってるわ。でも……いずれ身体が覚えこんで……いくのよ」
「そううまく行くかなあ〜」
 舞堂 葵はまだ懐疑的のようだ。

「いいのよ、そうならなくても。それより、優実が来るの?」
「うん、さっき携帯で遊びに行きますって言ってたわ。このこと言ったら絶対くるって……」
 パソコンでデーターを必死に見がなら言う、舞堂 葵。

「そう……じゃあ〜」
 そう言って何かを言付けて亜津子は出て行った。



「綺羅、いつもここよね」
「ここが一番おいしいのよ」
 と、あるおしるこ屋のお店で、ぜんざいを食べている二人。
 生徒会長の海道美知と三藤綺羅だ。あれから翔子と別れてこの店に来たらしい。
 水泳部キャプテンと生徒会の会長。その水泳部の副キャプテンは調教中だが。

「本当に立候補しないの?」
 綺羅が尋ねた。
「うん、もう〜そのつもり」
「う〜ん」
 綺羅は正直困っている。

 なぜかといえば……
「あなたが立候補するといえば、亜津子と麻里華はやりあわなくて済むから……」
 正直出馬してほしい綺羅のようだ。だが、美知にはその気がないらしい。

「……あなたにだから言うけど……嫌になったのよ」
「え?」
 
 ふ〜っとため息をつく。

「人間関係に疲れたわ」
「美知、あなた、うまくいっているじゃない。あなたのこと悪く言う人、聞いたことがないのよ」
 そう言われて軽く微笑む。まさにプチ貴婦人の微笑だ。

 生徒会長は、容姿、性格、成績共に抜群であった。後輩からも絶対的な信頼がある。
 ファン倶楽部さえあるのだ。亜津子とは全然比べものにならない。

「麻里華は身を引くことはないのかしら?」
「……無理よ、アンチ亜津子派が許さないわよ」
 麻里華とは、亜津子の対抗馬の三回生。こちらも亜津子に負けないぐらいのダークな雰囲気を持っているらしい。

 いろいろ複雑のようだ。生徒会も。

「そうよね」
「一番いいのは、あなたが次も立候補することよ。そしたら誰も立候補しないわ」
 諭す綺羅。そうなれば揉め事はなくなる。

 綺羅のいうことは確かであった。
 海道美知が出馬すれば、誰もかなわないだろう。才色兼備で、貴婦人の気品、一回生、二回生、いや三回生までファンがいるのだ。対抗馬が出たところで、逆にファンに潰される勢いさえある。

 海道美知がAと言えば、ファンはみなAと言うのだ。
 海道美知がBと言えば、ファンはみなBと言うのだ。
 まるで、どっかの独裁者のようだ。
 出ればほぼ100%当選確実。

 それが揉めないことにもつながるのは、たしか。

 ――でも……
 正直、辛いようだ。慕われ、頼られるというのもまた大変でもある。さらに、完璧さを求められているのだ。
 そりゃあ辛い。

「正直さあ〜 亜津子にはなってほしくないのよね」
 綺羅がぶつぶつ言い始めた。
「じゃあ、私が麻里華を応援しろと?」
「そんな性格じゃないでしょ。そういうことは、あなたはしては駄目な人なのよ」
 うらやましいという目で見る綺羅。

 海道美知は、ほぼ完璧に近いお嬢様だ。この女性に「えこひいきをする」という言葉は似合わない。

「ありがとう、綺羅」
 微笑む美知。この笑顔に同性はときめき、従うのだ。
 海道美知とはそれほどの女学生であった。



 笑顔と落ち着き、プチ貴婦人のような姿で同性を魅了する海道美知。
 それに対して、威圧とサドの雰囲気で、みなに恐怖を与えて従わせている亜津子。
 
 さらに、世界は私中心で動いており、その亜津子を引っ掻き回そうと思っている生意気翔子お嬢様。
 三人の女はそれぞれの運命に引き込まれていくのだった。
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