一方……

 あたりを落ち着いて見ている人妻女軍人。人の気配が無い……

 


 ――変ね……どこにいるのかしら。

 この教会の中にポポがいることは間違いない。しかし全く人の気配が無い。
 この教会は無人教会と呼ばれている。
 でも一応管理はされている。その証拠にごみやほこりがない。

 ここは言い伝えによると国の創始者のゆかりの人物が眠っているとの噂なのだ。
 ここに来ておまいりするとその人物の加護があるというらしい。
 
 もっとももう大半の民は忘れているが。
 昔はよく多くの人が来ていたのだが、最近はほとんど人が来ない。

 それどころか最近は夜ここにエッチ目的でくるカップルも多いと聞く。
 
 ということで、ここはお城の一部になっている。
 だから使用人かメイドが定期的に管理をしている。

 


 ――仕掛けはないようね。



 さすが軍人だ。このまえのことで懲りているのだろう。油断大敵である。
 はっきりいってポポはあのいたずら好きの性格。
 パチンコの玉をメイドの胸に打ったりして遊ぶとか平気なのだ。

 ――今度は洞窟とは違う……
 この城に就任した時にここのことは聞いていた。特別なしかけはないと見る。

 だがどことなく緊張感が漂う。


 すると!


「ル〜ビア」
 ひょっこり顔を出すポポ。教会の奥の部屋から顔だけ覗いている。
「殿下!」
 駆け寄るルビア、だがどことなく慎重に……駆け寄る。ひょいっとポポは奥に入ってしまった。
 後を追うルビア。




 部屋の戸が開いている……




 ――妙ね……



 何かあるとふんだのだろう。慎重にあたりを見回して様子を伺う。まるで敵を探るように……
 軍人である以上こういうのは得意な方だ。とにかく前回のことで懲りている。少年にいいようにされてしまったのはある意味ルビアの不覚でもある。

 開いている扉からスッと部屋に入った。


 ――あっ!?

 にこりと笑顔で座っている少年がいる。


 ポポだ。足を組んで余裕の表情。一方のルビアはじっとポポを見つめる。
 あたりを見ながらだ。

 


 ――ここは仕掛けはないと思うけど。


 しかし油断できない、あのポポの表情が気になる。すましているポポ。えらそうに椅子に座ってふんぞりかえっている。フランス貴族のようなネクタイをしているのでよけいにそう見える。

「殿下、帰りましょう」
「嫌だ」
「わがままはいけませんよ」
 ルビアが諭す。
「それよりこのまえの続きしよ」
「え?」
 ビクッとするルビア。その時、身体がなぜか反応した。

「あ、あの……殿下、昨日のことは忘れてください」
「どうして? 気持ちよかったよ」
 そう言われると困るルビア。


 確かに……気持ちはよかった。


 しかし!……



「殿下、よくお聞きください、私は軍人です、殿下をお守りするのが役目、あのようなことをする役目ではありません」
「いいじゃない、僕のあっちの世話もして」
 平気な顔していうのだからすごい。ちょっとドキドキのようだが。

 顔が赤いポポ。

 


 ――あっちの世話って……困ったわね……でも……いい機会だからここは……



 時間はここならある。なんとかして殿下の想いを断ち切りたいルビア。禁断の関係を続けたくないのだ。身体はどう思っているか知らないが。

「殿下、私はもう殿下とは……」
 と、言いかけた時だった……



 ――あら?


 足元が空に浮いているみたい……



「きゃああああっ!!」

 ルビアは奈落の底へ落ちた!!


 
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