一方のこちらはルビア。 大衆浴場だ。王城の中だがここは一般の人も自由に出入り出来る。こちらはたくさん人がいる。ただし有料制。といっても微々たる金額だが。しかし昼間の時間から王宮の軍人が浴場で湯に浸かっているのはまれだ。 一応女風呂、男風呂には分かれてはいる。しかし壁の仕切りが妙に低い。その気になったら覗けること間違いなし。 ――はあ〜さっきからため息ばかりね。 やはり殿下と……が頭にこびりついて離れようとしない。裸のままゆっくりと湯に浸かっているルビア。 さっき裸になってまた裸だ。ようやく泥の汚れとにおいも消えつつある。またあの美しい気の強い顔と美乳と腰のくびれが存在感を現してきた。 すると仕切り線の壁の向こうから少年がこちらを見ている。殿下と同じような年齢の少年だ。仕切りは12〜13歳の少年ならちょっと手を使えば昇って向こうを見ることが出来る。 「こら!」 女性の一人が少年にモノを投げつけた。 「元気がいいねえ〜」 ルビアの横にいるおばあさんがボソッとつぶやく。 「…………」 ルビアは黙っている。それどころじゃない。 ――今日から私はどうすれば……どう振舞うのがいいのかしら…… どうやらこちらを見ている少年。ルビアはターゲットにされているのだが、それどころではない様子。 少年はしつこい性格のようだ。また覗きにきた。 「こら!」 今度は別の女性が叫ぶ。 「しぶといねえ〜あの子は、こっちばかり見てるよ。、私に気があるんだね」 おばあさんが意味深につぶやく。ちょっと笑っているおばあさん。 「…………」 黙っているルビア。やっぱりそれどころじゃない。 「深刻な顔してどうしたあんた?」 「え?」 聞き返すルビア。どうやら話し相手になってくれないので不満のようだ。 「なんか悩みでもあるのかい?」 そう言われても……まさかこの国の皇太子殿下とセックスしましたとは言えない…… 信じてもらえるわけもないが。 「だ、大丈夫ですわ、私は」 作り笑顔で必死に答えるルビア。 「そうかい」 にこっと笑うおばあさん。話し相手になってくれてうれしいようだ。 「あの子、また……」 とおばあさんが言うと、 「あっ!」 声を出すルビア……ルビアが気づいたようだ。 少年の顔に見覚えがある! ラミレス……ポポの悪友ラミレス。 壁の向こうから顔を出して笑いながら見ていた少年はラミレスだったのだ。 |
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